チュートリアル:SL Palette 解析編

SL Palette 解析編では設定編で準備したサイディーム回路モデルとsimulinkモデルを使用して 解析を行います。

fig

設定編がまだの方はこちらからご確認ください。

サンプル回路も設定編でダウンロードできます。

1 高速にシミュレーション

下記の手順でサイディームから電圧や電流の波形をADコンバータの要領でサンプリングし、フィードバック制御を行っている様子をSimulink上で確認します。

  1. SimulinkのPI_DCDC.slx内の、SCIDEAMブロックの設定からシミュレーション モードを、Transientを選択後適用ボタンを押した後OKボタンで確定してください。
    fig6

  2. シミュレーション時間を0.02に設定し、シミュレーションを開始してください。
    fig7

シミュレーション終了後、Scopeブロックをダブルクリックすることで、グラフの結果が得られます。
約8[ms]程度で出力電圧(凡例:赤実線)が指令値(凡例:赤点線)3[V]に収束している結果になります。

fig8


2 詳細なシミュレーション

Transient解析ではPWMスイッチの1周期の代表点をSimulinkに送っているため、スイッチング1周期の間にどのような波形が出ているのか観測することができません。

そのような波形を観測したいときは下記の手順でWaveform解析を行って詳細なシミュレーションを行います。

Tips

一般的に、Transientと比べてWaveformは出力データ点数が多くなり解析に時間がかかります。
そのため、「Waveform 開始時間」を出力したい部分からを指定することで、シミュレーション時間を短縮することができます。

  1. PI_DCDC.slx内の、SCIDEAMブロックに下記の設定を行います。
    設定する後は適用ボタンを押してください。

    • シミュレーション モード : Waveform
    • Waveform 開始時間 : 0.019
      fig9
  2. シミュレーション時間を0.02に設定し、シミュレーションを開始してください
    fig10

    Info

    SimulinkのSCOPE画面では、先のTransient解析と同じ結果が得られます。

シミュレーション結果は MATLABのワークスペース上に出力されます。
SCIDEAMブロックの出力信号はTransient解析の結果となりますのでご注意ください。

Weveform解析で出力されるのは、サイディーム側で設定した出力変数です。​
Simulink側に送信するSLexportの値とは異なり、回路の測定点を個別に出力することが可能です。​

ワークスペース上出力される変数はScideamWaveform_*という名前で出力されます。

fig

ワークスペースに出力された出力結果は、MATLABのコマンドラインからPlot関数を用いることで波形として確認することができます。

Example

抵抗R1にかかる電圧値をプロットする場合

plot(ScideamWaveformResult_Time,ScideamWaveform_R1_V_AVE);

抵抗R1にかかる電圧値と電圧センサOUT1の電圧値をプロットする場合

plot(ScideamWaveformResult_Time,ScideamWaveform_R1_V_AVE);
hold on;
plot(ScideamWaveformResult_Time,ScideamWaveform_OUT1_V_AVE);

fig


3 一巡の周波数特性を解析

3.1 シミュレーションの実行

下記の手順でSimulinkで作成したコントローラモデルとサイディームで作成したプラントモデルの一巡伝達関数の周波数特性を観測することができます。

  1. PI_DCDC.slx内の、SCIDEAMブロックに下記の設定を行います。
    設定後は適用ボタンを押してください。
    • シミュレーション モード : FrequencyResponseAnalysis
    • 周波数特性解析 開始時間 : 0.04
      fig13

Note

周波数特性解析は、系が定常状態になった状態で実施することで正しく算出されます。 周波数特性解析を行う前に、Transientで系が十分に定常状態に到達する時間を確認しておき、その値を「周波数特性解析 開始時間」に入力してください。

  1. AC Sweep、伝達関数の入出力を設定します。
    トポロジー読込を押してシンボル名リストを更新してください。 その後、各ポップアップメニューからそれぞれ次の変数を設定してください。

    • AC Sweep : VAS1
    • From : OUT1:V:AVE
    • To : R1:V:AVE
      またPhase Foldにはチェックを入れておいてください。(位相特性が-180度から+180度の範囲で表示されます。)
      fig

    Note

    AC Sweepのポップアップメニューにはサイディームモデル内のAC Sweep素子のシンボル名が表示されます。
    From、Toのポップアップメニューにはサイディームモデル内で設定した出力変数が表示されます。

    Info

    リストにemptyと表示され、素子が選択できない場合は、適用をクリックして再度ファイルを開きなおしてください。

  2. シミュレーション時間をinfに変更し、シミュレーションを開始してください

fig14

周波数特性を解析する系は、伝達関数の入力と出力(分母と分子)を指定することで確定されます。
本チュートリアルでは、FromをOUT1:V:AVEに、ToをR1:V:AVEに設定することで一巡伝達特性を調べることができます。

このようにすることで、AC Sweep素子から出力された微小変動がフィードバック信号に加算され、制御器とプラントを通過した変動を観測することができます。
この微小変動の変化から周波数特性が算出され、ボード線図として表示されます。

シミュレーション時間はinfに設定されていますが、周波数特性の解析が完了すると自動的にサイディームがシミュレーションを中断させます。


3.2 ボード線図を表示

FrequencyResponseAnalysisモードのシミュレーション実行後、MATLABのワークスペースに以下の結果が保存されます。 これらの変数をプロットすることで、グラフ(ボード線図)を得ることができます

変数名 内容
ScideamBodeFrequency 周波数
ScideamBodeGain (周波数に対応した)利得
ScideamBodePhase (周波数に対応した)位相

fig16

fig17

自動的に描画されたボード線図では、ゼロクロスした点での周波数、利得、位相が追記されます。

これら利得と位相それぞれのゼロクロス点を確認することで、位相余裕と利得余裕を素早く検討することが可能になります。

Note

シミュレーションを実行する前にSCIDEAM_BODEブロックをモデル内に配置し、
シミュレーション終了時自動的にボード線図を描画させるにチェックを入れておくことで、
シミュレーション終了時にすぐにボード線図を確認することが可能です。


3.3 周波数特性の結果がうまく得られないときは

Simulinkと連携して行う周波数特性解析は、サイディームの周波数特性機能を内部的に用いています。
この機能は、解析する系によっては正確な結果が得られない場合もあります。
正確な結果を得るための検討項目については 周波数特性解析を参照してください。


以上がSL Paletteの基本的な使い方となります。