詳細損失解析[Detail Switch]

機能説明

詳細損失解析は、スイッチのターンオン損失、ターンオフ損失、
すなわちスイッチング損失を含む全ての損失を解析する損失解析です。

スイッチング損失を計算するためにはスイッチに専用素子Nch FET またはNch IGBTを使用する必要がある。

詳細損失解析では正確なスイッチング損失の解析のため、非常に短い計算ステップで計算を行います。
そのため理想損失解析と比較して解析完了時間が長くなります。

また詳細損失解析には交流入力回路を高速に解析するために サンプリング数の設定が可能となっております。
詳細は後述するNsmpl: スイッチング損失サンプル数を参照してください。

Note

詳細損失解析ではおいてはメイン周波数が高周波に自動的に変更されるため、プログラムでoutput関数AVEモード(MINなども同様)などで使用している場合、メイン周波数の変更にともなってAVEの内容が変化してしまい、結果として正しい制御ができなくなってしまいます。

上記のような解析を行う場合にはV ProbeまたはI Probeを使用して output関数の電圧、電流にプローブで検出した電圧、電流を設定してください。

Note

解析直前にメイン周期で動作している全ての周期素子は、内部で自動生成されたFRDに登録され、内部FRDの周波数に元のメイン周波数が設定されます。
FRDに登録されるというのは、FRD周波数で駆動することを意味します。
また内部FRDは詳細損失解析が終了すると自動的に削除されます。
なお、詳細解析時における高周波メイン周波数でPRCなどの周期素子を動作させるには、そのシンボルの頭に*Fs_をつける必要があります。

回路の一部分の損失をまとめて計算するには

損失解析において、回路の一部分をまとめて損失を計算したい場合には、その回路部分をカスタム回路としてまとめることで、素子をグループ化することができます。
損失解析ではカスタム回路は1個の素子として扱われるために、カスタム回路全体の損失が1つの損失として計算することができます。

カスタム回路の個々の内部素子の損失は内部要素の損失として把握することができます。
たとえば、回路全体が機能別の部分回路の合成として作成されている場合や負荷が複数ある回路の効率を把握する場合に、部分回路や複数の負荷をまとめてカスタム化すると便利です。

なお、カスタム回路については下記を参照してください。
カスタム回路

解析手順

事前準備

損失解析を実施するに当たり、回路を定常状態にしておく必要があります。
そのため、回路が定常状態となる時間までTransient解析を行ってください。

定常状態までTransient解析を行ったあとは、Updateを行って回路状態を更新してください。 これで損失解析の事前準備は完了となります。

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解析方法の選択

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損失解析はツールバー内のPower -> Powerから行います。

詳細損失解析を実行する場合には Detail Switchを選択してください。

解析ダイアログの設定

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解析方法を選択すると損失解析の設定項目を入力する解析ダイアログが表示されます。

各項目を設定後、OKを押すことで損失解析が実行されます。

SW Base: 周期決定素子シンボル

損失を含む電力の計算を行うには、瞬時電力をある期間で平均化する必要があります。
SW Baseではその期間をどの素子に合わせるかを設定します。

通常、周期的なスイッチン動作を行うコンバータに対して解析を行う場合には
スイッチン周期を決定する素子のシンボル名を設定してください。

スイッチング周期を決定する素子

スイッチング周期を決定する素子はコンバータ、またはFRD素子のどちらかとなります。
コンバータを設定する場合にはSW Base*CVTと入力してください。

Tolerance: 定常状態許容値

損失を含む電力の計算は通常、定常状態で行います。
したがって、回路状態がどれくらい定常状態に近いかを判定する基準が必要となります。

ToleranceはLCの蓄積電力を元に何%で定常状態とするかを決定する項目となります。
小さい値であるほど、判定が厳しくなります。

Toleranceの値について

Toleranceは通常の解析であれば、デフォルトである1で十分解析可能となっております。
より定常状態に近づけた状態で解析結果を見たい場合は小さくしてください。

逆に、計算が収束しない場合には、収束させるために大きな値を設定してください。

なお、収束状況はタイトルバーのSRの値を参考にしてください。
この値がToleranceの設定値以上である場合、定常状態と判定されません。

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AC Freq: 交流周波数

AC Freqは商用周波数電源を使用している回路で、商用周波数を一つの区間として電力を計算したい場合に その周波数を設定する項目です。

この項目が0の場合はSW Baseの期間を使用し、0以外の場合は入力された周波数を電力計算の期間とします。

Nsmpl: スイッチング損失サンプル数

Nsmplはスイッチング損失を計算するポイント数を設定する項目です。
ACFreq0に設定されているとき、また、理想損失解析時にはこの項目は無視されます。

スイッチング損失の計算は1つの計算ポイントごとの時間コストが大きく、全てのポイントを計算する場合、 トータルの計算時間が非常に長くなってしまうことがあります。

Nsmplを設定すると、電力計算時間をNsmplの値で等分割したポイントのみでスイッチング損失計算を行い、 その平均値を近似値として結果を表示します。

上記の様に代表点を計算することで、計算時間を短縮させることができます。

Nsmplの設定方法

AC Freqに商用周波数50Hzを設定したとき電力の計算時間は20msとなります。 スイッチング周波数を100kHzとすると2000ポイント計算することになります。 ここで、Nsmpl9に設定すると計算ポイントは9ポイントとなり計算時間を 大幅に短縮することができます。

Min Cycle: 損失解析サイクル数の下限値

損失解析を収束させるサイクル数の下限を指定します。
収束条件が満たされた場合でも、指定した回数まで損失解析サイクルが繰り返されます。

Max Cycle: 損失解析サイクル数の上限値

損失解析を収束させるサイクル数の上限を指定します。
損失解析の収束条件を満たしていない場合でも、指定した回数で収束させます。

Bm: 磁束密度チェックボックス

Bmがチェックされている場合、回路内のすべてのコアの磁束密度を時間波形として出力することができます。
磁束密度はCMPウィンドウに表示されます。(エスチャートには出力されません)

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解析結果

解析が完了すると、損失解析リストがポップアップします。 損失解析リストに、全ての素子の損失解析結果が表示されます。

損失解析リストの機能につきましては損失解析リスト、損失比較リストを参照してください。

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