詳細 Nch Si/SiC-FET[Nch Si/SiC-FET]

Location : Detail Switch/Nch Si/SiC-FET

外形

FETModel

説明

Nch Si/SiC-FETは詳細解析においてスイッチング特性を解析するための素子です。

Nch Si/SiC-FETはNch型のSi-MOSFETまたは、SiC-MOSFET専用の素子で、 内部はスイッチ部のほか、入力容量、出力容量、ゲート抵抗、ボディダイオードで構成されています。

内部回路は以下となります。

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損失解析用の素子について

スイッチング損失解析用の素子は理想スイッチモードと詳細スイッチモードの2つの動作モードがあります。

2つの動作モードでは、適用されるスイッチ素子の動作領域が異なります。

動作領域について

スイッチ素子は基本特性として次の3種類の動作領域を持っています。

  • オン領域(線形領域)
  • オフ領域(遮断領域)
  • アクティブ領域(飽和領域)

各領域についての説明はスイッチング特性を参照してください。

理想スイッチモード

理想スイッチモードは理想損失解析や、過渡応答解析波形解析等の解析を行った場合の動作モードです。

理想スイッチモードではオン領域(線形領域)とオフ領域(遮断領域)を動作領域としています。
アクティブ領域(飽和領域)については計算されず無視されます。

詳細スイッチモード

詳細スイッチモードは詳細損失解析や、詳細波形解析の解析を行った場合の動作モードです。

詳細スイッチモードではオン領域(線形領域)とオフ領域(遮断領域)に加えて、
アクティブ領域(飽和領域)を含む、すべての領域を動作領域としています。

パラメータ

Nch Si/SiC-FETではすべての解析で参照される理想スイッチパラメータと、
スイッチング損失用の詳細スイッチパラメータがあります。

詳細スイッチパラメータは詳細損失解析や、詳細波形解析のときのみ解析に使用されます。

理想スイッチパラメータ

理想スイッチパラメータは、通常のスイッチと同様のパラメータです。
このパラメータは理想スイッチモード、詳細スイッチモードで有効です。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Symbol シンボル名 - - -
Ron オン抵抗 Ω Value > 0.0 オン領域におけるドレイン・ソース抵抗。
Roff オフ抵抗 Ω Value > 0.0 オフ領域におけるドレイン・ソース抵抗。
Vth ゲートしきい値電圧 V Value > 0.0 オフ領域とオフ領域(詳細スイッチモードではアクティブ領域)のゲート電圧境界値。

ボディダイオードパラメータ

ボディダイオードパラメータは通常のダイオードと同様のパラメータです。
このパラメータは理想スイッチモード、詳細スイッチモードで有効です。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Ronb ボディダイオードオン抵抗 Ω Value > 0.0 ボディダイオードの導通抵抗。
Roffb ボディダイオードオフ抵抗 Ω Value > 0.0 ボディダイオードの遮断抵抗。
Vonb ボディダイオードオン電圧 V Value >= 0.0 ボディダイオードの順方向電圧。
Qmaxb ボディダイオード最大蓄積電荷 C Value >= 0.0 ボディダイオードの逆方向回復特性に関係する蓄積電荷の最大値。

Tips

Qmaxbにデータシートの値を設定する場合はQrrの半分の値を設定します。

寄生容量に関するパラメータ

寄生容量に関するパラメータはスイッチ周辺の容量についてのパラメータです。

このパラメータは理想スイッチモード、詳細スイッチモードで有効です。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Ciss 入力容量 F Value > 0.0 スイッチ素子の入力容量。一般にゲート・ソース容量とゲート・ドレイン容量の和。
Coss 出力容量 F Value > 0.0 スイッチ素子の出力容量。一般にドレイン・ソース容量とゲート・ドレイン容量の和。
RCds 出力容量ESR Ω Value >= 0.0 ドレインソース容量の等価抵抗。

出力容量ESR

出力容量ESRは、トポロジーエラーを避けるために挿入されており、通常、デフォルト値(10mΩ)の値を設定することを推奨しています。エラーが生じなければ0に設定可能できます。

ゲート抵抗に関するパラメータ

ゲート抵抗に関するパラメータはスイッチ周辺の抵抗についてのパラメータです。

Rginは理想スイッチモード、詳細スイッチモードで有効です。
RgonRgoffは詳細スイッチモードで有効です。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Rgin 内部ゲート抵抗 Ω Value > 0 素子内部のゲート抵抗。
Rgon 測定時ゲートオン抵抗 Ω Value > 0 ゲート端子に接続されるドライブ抵抗(ターンオン用回路のゲート抵抗値)。
Rgoff 測定時ゲートオフ抵抗 Ω Value > 0 ゲート端子に接続されるドライブ抵抗(ターンオフ用回路のゲート抵抗値)。

ゲート抵抗に関するパラメータの区別

RginにはFET内部のゲート抵抗値を設定します。
RgonRgoffはデータシートの Tr,Tfの測定条件に記載されているゲート抵抗値 を設定します。

データシートによっては、Tr,Tf測定条件に下図の様なターンオン時とターンオフ時のゲート抵抗値が異なる回路が記載されている場合や、RG(on)RG(off)のように分けて記載されている場合があります。
その場合は、RgonRgoffにそれぞれの値を設定します。
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Tr,Tf測定条件のゲート抵抗値が特に区別されていない場合はRgonRgoff双方に同じ値を設定してください。

Example

  • Tr,Tf測定条件のゲート抵抗値が特に区別されておらず、RG=10Ωの場合
    RgonRgoffはともに10Ωに設定します。

  • Tr,Tf測定条件にターンオン時とターンオフ時のゲート抵抗が並列に分岐した回路が記載されており、RG(on)=10ΩRG(off)=10Ωの場合
    Rgonは10Ωに、Rgoffは5Ωに設定します。

v1.5.12のゲート抵抗パラメータの定義の変更について

v1.5.10以前のゲート抵抗値(Rg)は、 素子内部のゲート抵抗値とTr,Tf測定時の外部ゲート抵抗値を合わせたものを設定する必要があり、 シミュレーション回路上にゲート抵抗を含めることができません(あるいは、ゲート抵抗と同値の負の抵抗を追加するなどの対処が必要)でした。

v1.5.12以降は内部ゲート抵抗と外部ゲート抵抗のパラメータ値は分けて設定し、内部ゲート抵抗値はRgin、Tr,Tf測定時の外部のゲート抵抗値は RgonRgoffに設定する仕様に変更されました。
この変更により、シミュレーション回路上のゲート端子に接続されるドライブ抵抗については任意で、実機に合わせたゲート駆動回路を自由に作成することができるようになりました。

スイッチング特性パラメータ

スイッチング特性パラメータはスイッチング特性に関するパラメータです。 このパラメータは 詳細スイッチモードのみで有効なパラメータとなります。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Vgsat ゲート飽和電圧 V Value > Vth スイッチがオン領域になるときのゲートソース電圧。駆動パルスの振幅を設定します。
Tr ターンオン時間 sec Value > 0.0 スイッチのターンオン時間。
Tf ターンオフ時間 sec Value > 0.0 スイッチのターンオフ時間。
It Tr,Tf測定時ドレイン電流 A Value > 0.0 ターンオン時間、ターンオフ時間の測定時におけるドレイン電流。オン領域における値を設定します。
Vt Tr,Tf測定時ドレイン・ソース電圧 V Value > 0.0 ターンオン時間、ターンオフ時間の測定時におけるドレイン・ソース電圧。オフ領域における値を設定してください。

Vds-Coss特性

Vds-Coss特性はCossボタンをクリックすることで設定画面を開くことができます。

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特性テーブル

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特性テーブルはVds-Coss特性を記載するテーブルです。

Vds-Coss特性はアクティブ領域における出力容量Cossはドレイン・ソース電圧Vdsに対しての依存性を表す特性です。

Vds-Coss特性は通常データシートに記載されておりますので、そちらから取得し、テーブルにして設定画面に記載してください。

Vds-Coss特性はVdsCossの順序でスペースで区切って値を設定してください。
各行のVdsは小さい順で並べなければなりません。
テーブルに記述されていない部分の特性は線形補完され範囲外の特性は両端値でクリップされます。

Active:アクティブボタン

Vds-Coss特性が設定されており、且つActiveにチェックが入っている場合には特性パラメータのCossの値に関わらず、ここのテーブルで設定した特性に従ったCossの値が使用されます。

なお、この設定は 詳細スイッチモードのみで有効な設定となります。

Ave:平均値ボタン

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Ave特性テーブルに記載されたVds-Coss特性から平均値を算出し、特性パラメータのCossに設定するボタンです。
Aveボタンをクリック後、OKを押すとCossに反映されます。

Clear:クリアボタン

特性テーブルの内容がクリアされます。

拡張パラメータ

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拡張パラメータは、より詳しい解析を行いたい場合に設定します。
More…ボタンをクリックすると、拡張パラメータの入力ダイアログが開きます。
LgLdLsはFETパッケージ内部配線による寄生インダクタンスを設定します。通常、データシートには記載されておらず上級者向けのパラメータとなります。 VgonVgoffはTr,Tf測定時駆動電圧と実際のシミュレーション回路上のゲート飽和電圧電圧(Saturation Gate Voltage)に乖離がある場合や、駆動オフ電圧が負の場合に設定します。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Lg ゲートインダクタンス H Value > 0.0 FETパッケージ内部のゲート端子配線による寄生インダクタンス。
Ld ドレインインダクタンス H Value > 0.0 FETパッケージ内部のドレイン端子配線による寄生インダクタンス。
Ls ソースインダクタンス H Value > 0.0 FETパッケージ内部のソース端子配線による寄生インダクタンス。
Vgon 測定時駆動オン電圧 V Value > 0.0 Tr,Tf測定時駆動オン電圧。
Vgoff 測定時駆動オフ電圧 V Value <= 0.0 Tr,Tf測定時駆動オフ電圧。

その他のパラメータ・素子機能

グループ機能

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Nch Si/SiC-FETにはパラメータを他のNch Si/SiC-FETにも反映させる機能としてグループ機能があります。

GroupID0以外の値にした場合、同じIDを持つ素子はグループとなります。 同じグループの素子は、すべて同じパラメータが設定され、変更時にはグループ内の素子全てに反映されます。

同じグループとなっている素子はGroupボタンから確認することができます。

なお、入力の範囲は0以上の自然数となります。

素子パラメータのインポート・エクスポート機能

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Nch Si/SiC-FETでは素子パラメータのインポート・エクスポートを行うことができます。
インポート・エクスポート対象のファイル拡張子は.prmです。 Exportボタンをクリックすると、エクスプローラが起動するので、名前を入力して保存します。
同様に、Importボタンをクリックして、エクスプローラから保存済みの.prmファイルを選択して読み込みます。

素子パラメータライブラリの読み込み

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Libボタンをクリックするとアプリケーションに同梱されたFETライブラリのディレクトリが開き,.prmファイルをインポートできます。