IGBT専用素子[Nch IGBT]

Location : Detail Switch/Nch IGBT

外形

IGBTModel

説明

Nch IGBTは損失解析においてスイッチング損失を解析するために使用する素子です。

Nch IGBTはNch型のFETスイッチ素子で、 内部はスイッチ部のほか、入力容量、出力容量、ゲート抵抗、ボディダイオードで構成されております。

内部回路は以下となります。
なお、DidealVonRonがともに0である理想ダイオードです。
Didealにより、スイッチがオンしていても逆向きに電流が流れないというIGBTの振る舞いを実現しています。
(逆バイアスされた場合にはボディダイオードDbを通ります。)

fig

Nch IGBTは基本時にはNch FETと同じ機能を持ちますが、 異なる機能として以下2点があります。

  1. Nch IGBTにはNch FETのパラメータに加え、オン領域のコレクタ・エミッタ電圧(Vo)を持ちます。
    このパラメータは理想スイッチモード、詳細スイッチモードのどちらでも有効です。

  2. Nch IGBTでは、オン領域のコレクタ電流はコレクタからエミッタへの一方向にしか流れません。
    オン時にコレクタ・エミッタが逆バイアスされた場合、逆電流はスイッチ部のコレクタ電流としては流れず、並列に存在するボディダイオードに流れます。
    なお、Nch FETではオン領域のコレクタ電流は双方向に流れます。

損失解析用の素子について

スイッチング損失解析用の素子は理想スイッチモードと詳細スイッチモードの2つの動作モードがあります。

2つの動作モードでは、適用されるスイッチ素子の動作領域が異なります。

動作領域について

スイッチ素子は基本特性として次の3種類の動作領域を持っています。

  • オン領域(線形領域)
  • オフ領域(遮断領域)
  • アクティブ領域(飽和領域)

各領域についての説明はスイッチング特性を参照してください。

理想スイッチモード

理想スイッチモードは理想損失解析や、過渡応答解析波形解析等の解析を行った場合の動作モードです。

理想スイッチモードではオン領域(線形領域)とオフ領域(遮断領域)を動作領域としております。
アクティブ領域(飽和領域)については計算されず無視されます。

詳細スイッチモード

詳細スイッチモードは詳細損失解析や、詳細波形解析の解析を行った場合の動作モードです。

詳細スイッチモードではオン領域(線形領域)とオフ領域(遮断領域)に加えて、
アクティブ領域(飽和領域)を含む、すべての領域を動作領域としております。

パラメータ

Nch IGBTではすべての解析で参照される理想スイッチパラメータと、
スイッチング損失用の詳細スイッチパラメータがあります。

詳細スイッチパラメータは詳細損失解析や、詳細波形解析のときのみ解析に使用されます。

理想スイッチパラメータ

理想スイッチパラメータは、通常のスイッチと同様のパラメータです。
このパラメータは理想スイッチモード、詳細スイッチモードで有効です。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Symbol シンボル名 - - -
Ron オン抵抗 Ω Value > 0.0 オン領域におけるコレクタ・エミッタ抵抗。ピンチオフ電圧が存在するため、Ron * It < Vgsat - Vth の条件を満たすように値を設定してください。
Roff オフ抵抗 Ω Value > 0.0 オフ領域におけるコレクタ・エミッタ抵抗。
Vce(sat) オン電圧 V Value >= 0.0 オン領域のコレクタ・エミッタ電圧。
Vth ゲートしきい値電圧 V Value > 0.0 オフ領域とオフ領域(詳細スイッチモードではアクティブ領域)のゲート電圧境界値。Ron * It < Vgsat - Vth の条件を満たすように値を設定してください。

ボディダイオードパラメータ

ボディダイオードパラメータは通常のダイオードと同様のパラメータです。
このパラメータは理想スイッチモード、詳細スイッチモードで有効です。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Ronb ボディダイオードオン抵抗 Ω Value > 0.0 ボディダイオードの導通抵抗。
Roffb ボディダイオードオフ抵抗 Ω Value > 0.0 ボディダイオードの遮断抵抗。
Vonb ボディダイオードオン電圧 V Value >= 0.0 ボディダイオードの順方向電圧。
Qmaxb ボディダイオード最大蓄積電荷 C Value >= 0.0 ボディダイオードの逆方向回復特性に関係する蓄積電荷の最大値。

ゲート抵抗および寄生容量に関するパラメータ

ゲート抵抗および寄生容量に関するパラメータはスイッチ周辺の抵抗および容量についてのパラメータです。

このパラメータは理想スイッチモード、詳細スイッチモードで有効です。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Rg ゲート抵抗 Ω Value > 0 ゲート端子に接続されるドライブ抵抗(素子内部のゲート抵抗含む)。
Cies 入力容量 F Value > 0.0 スイッチ素子の入力容量。一般にゲート・エミッタ容量とゲート・コレクタ容量の和。
Coes 出力容量 F Value > 0.0 スイッチ素子の出力容量。一般にコレクタ・エミッタ容量とゲート・コレクタ容量の和。
RCds 出力容量ESR Ω Value >= 0.0 コレクタエミッタ容量の等価抵抗。

出力容量ESR

出力容量ESRは、トポロジーエラーを避けるために挿入されており、通常、デフォルト値(10mΩ)の値を設定することを推奨しております。エラーが生じなければ0に設定可能できます。

スイッチング特性パラメータ

スイッチング特性パラメータはスイッチング特性に関するパラメータです。 このパラメータは 詳細スイッチモードのみで有効なパラメータとなります。

パラメーター 内容 単位 入力範囲 説明
Vgsat ゲート飽和電圧 V Value > Vth スイッチがオン領域になるときのゲートエミッタ電圧。駆動パルスの振幅を設定します。ピンチオフ電圧が存在するため、Ron * It < Vgsat - Vth の条件を満たすように値を設定してください。
Tr ターンオン時間 sec Value > 0.0 スイッチのターンオン時間。
Tf ターンオフ時間 sec Value > 0.0 スイッチのターンオフ時間。
It Tr,Tf測定時コレクタ電流 A Value > 0.0 ターンオン時間、ターンオフ時間の測定時におけるコレクタ電流。オン領域における値を設定します。Ron * It < Vgsat - Vth の条件を満たすように値を設定してください。
Vt Tr,Tf測定時コレクタ・エミッタ電圧 V Value > 0.0 ターンオン時間、ターンオフ時間の測定時におけるコレクタ・エミッタ電圧。オフ領域における値を設定してください。

スイッチング特性パラメータについて

スイッチング特性パラメータのTr,Tf,It,Vrについては 正確な解析を行うため、実測値を設定することを推奨しております。
実測値の利用が難しい場合にはデータシートからパラメータを設定してください。

Vds-Coss特性

Vds-Coss特性はCossボタンをクリックすることで設定画面を開くことができます。

fig

特性テーブル

fig

特性テーブルはVds-Coss特性を記載するテーブルです。

Vds-Coss特性はアクティブ領域における出力容量Coesのコレクタ・エミッタ電圧Vceに対しての依存性を表す特性です。

Vds-Coss特性は通常データシートに記載されておりますので、そちらから取得し、テーブルにして設定画面に記載してください。

Vds-Coss特性はVdsCossの順序でスペースで区切って値を設定してください。
各行のVdsは小さい順で並べなければなりません。
テーブルに記述されていない部分の特性は線形補完され範囲外の特性は両端値でクリップされます。

Active:アクティブボタン

Vds-Coss特性が設定されており、且つActiveにチェックが入っている場合には特性パラメータのCoesの値に関わらず、ここのテーブルで設定した特性に従ったCossの値が使用されます。

なおこの設定は 詳細スイッチモードのみで有効な設定となります。

Ave:平均値ボタン

fig

Ave特性テーブルに記載されたVds-Coss特性から平均値を算出し、特性パラメータのCoesに設定するボタンとなります。

Clear:クリアボタン

特性テーブルの内容がクリアされます。

その他のパラメータ・素子機能

グループ機能

fig

Nch IGBTにはパラメータを他のNch IGBTにも反映させる機能としてグループ機能があります。

GroupID0以外の値にした場合、同じIDを持つ素子はグループとなります。
同じグループの素子は、すべて同じパラメータが設定され、変更時にはグループ内の素子全てに反映されます。

同じグループとなっている素子はGroupボタンから確認することができます。

なお、入力の範囲は0以上の自然数となります。

素子パラメータのインポート・エクスポート機能

Nch IGBTでは素子パラメータのインポート・エクスポートを行うことができます。
インポート・エクスポート対象のファイル拡張子は.prmです。