バイポーラ方式DC-ACインバータのPWM制御方法

投稿者: 中村 創一郎 投稿日:

DC-ACってコンバータじゃなくてインバータなの?

AC-DCはインバータじゃなくてコンバータなの?と思ったあなた、インバータのスイッチのPWM制御方法はご存知でしょうか。

一連の記事では、DC-ACインバータについて、さまざまな方式を説明していきます。
この記事では、バイポーラ方式という駆動方法について説明します、他の方式についても記事を書いていきますので、そちらはどうぞお待ちください。

ところで、DC-ACは日本語で逆変換装置、つまりインバータ、AC-DCは順変換装置・整流器、つまりコンバータと言います。

それでは始めましょう。

DC-ACインバータの目的

DC-ACインバータは直流を交流にすることが目的です。

ここではサイン波を出力する単相のインバータを主に扱いますが、その他にも例えば、大容量の電力を扱う、三相インバータや、車用の12Vdcを100Vacに変換するインバータで多くみられる矩形波を出力するものなどもあります。

DC-ACインバータ回路

回路は以下の通りです。
ここでは単相2線式のDC-ACインバータを対象とします。

4つのスイッチを高速に駆動し、出力側のLCによって平滑化することで、サイン波を出力させます。
ここで、スイッチと並列に接続されているダイオードは、FETのボディーダイオードです。

スイッチのPWM駆動方法

スイッチのキャリア信号と、サイン波を出力させるための制御信号波を以下に示します。

Q1、Q4とQ2、Q3は同じ信号で駆動され、Q1とQ2は排他の駆動をされます。

このPWM動作によってa, b間に発生する電圧を、LCで平滑化することで、出力にサイン波を得ます。

この時、a, b間にかかる電圧は2Eであり、+E, -Eとなりこれを交互に繰り返します。

このパターンでフルブリッジインバータを動作させた場合、出力電圧は±E[V]のいずれかの値となり、0Vは出力されず、出力電圧の波形は、半周期中にプラス、マイナス両極性の電圧が現れるバイポーラ性を有する波形となる。このことから、このような正弦波PWMはバイポーラ変調と呼ばれる。

パワーエレクトロニクスハンドブック p404

バイポーラ方式のメリット・デメリット

メリット

  • スイッチ駆動を一つのPWM信号とそれの排他信号という最低限の信号で行うことができるため、駆動が簡単。

デメリット

  • Vabが2倍の電圧となるため、高耐圧の素子にする必要がある。
  • Lにかかる電圧も大きくなるため、リップルが大きくなる。

PWM駆動のシミュレーション

アナログ回路での駆動

シミュレーションの回路図を以下に示します。

一つのキャリア信号、一つの制御信号から全てのスイッチを駆動していることがわかります。

ここで回路モデル中、VS1などの絶縁アンプは、ハイサイドスイッチを同一信号で駆動するために便宜上、使用しています。

シミュレーション結果は以下の通りです。
キャリア信号と制御信号、Vabに注意して、出力電圧を確認してください。

シミュレーションは、上部にある開始ボタンをクリックすることで、実行可能です。
Waveformモードにし、50msec実行した結果を確認しましょう。

スイッチングキャリアの設定方法などは、別途チュートリアルをご覧ください。
https://www.smartenergy.co.jp/support/ScideamArticles/help/tutorial/tutorial_circuit/tutorial_circuit/

デジタル制御による駆動

サイディームのスクリプト機能を使った、デジタル制御による駆動を以下に示します。

主回路は、スイッチ素子にPWMswitchという素子を使用しています。
この素子は、PWMの時比率を直接入力できるイメージで使用できます。

そのため、アナログ回路の際に使用した制御信号は、単純に時比率という形でスクリプトから、PWMスイッチに指定しています。

以下、回路図です。

D1 = 0.5 * sin(50*2*PI*t) + 0.5;

setoutvar(D1);

setparam("Q1","T0",D1);
setparam("Q2","T0",D1);
setparam("Q3","T0",D1);
setparam("Q4","T0",D1);

回路も制御も非常にスッキリとした形でモデリングできました。

アナログ回路で駆動することが目的でなければ、シミュレータとしても高速に解析することが可能であるため、この方法をお勧めいたします。

詳しい使用方法は、チュートリアルをご覧ください。
https://www.smartenergy.co.jp/support/ScideamArticles/help/tutorial/tutorial_digital_palette/tutorial_digital_palette/

まとめ

● バイポーラ方式におけるPWM制御の方法について説明しました。
● アナログ回路における実現方法をシミュレーションモデルで説明しました。
● デジタル回路における実現方法をシミュレーションモデルで説明しました。
バイポーラ方式は簡単な駆動信号入力によってDC-ACインバータを実現できる回路です。

まずは、インバータの動作に慣れるために色々とシミュレーションしてみるのも良いかもしれません。
こちらの記事で使用した回路モデルは、本記事からダウンロード可能です。

シミュレーションモデルについて

本モデルは、電源パワエレ向け高速回路シミュレータScideam(サイディーム)で動作可能です。
本記事のモデルは以下からダウンロードしてください。

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参考文献

[1]パワーエレクトロニクスハンドブック編集委員会 編, “パワーエレクトロニクスハンドブック”, オーム社 (平成22年)


中村 創一郎

中村 創一郎

株式会社スマートエナジー研究所代表取締役 博士(工学)
モデルベース開発やシステムズエンジニアリングを用いて、 系統連系インバータや双方向コンバーターなどのデジタル制御電源開発を得意とする、エンジニア兼コンサルタント兼経営者

日々、シミュレーションの魅力を伝えられないか奮闘中

実績
大手電機メーカーへの開発支援、モデルベース支援
系統連系インバータの開発・認証取得支援
自動車メーカーへのシステムズエンジニアリング支援
宇宙航空研究開発機構との共同研究
など

会社創業以来10年以上、デジタル制御電源とモデルベース開発に従事