LLCコンバータ<br>第4回 制御・周波数特性編

LLCコンバータ
第4回 制御・周波数特性編

この記事ではLLCコンバータの制御について、解説していきます。
第3回までの記事では、LLCコンバータの出力がスイッチング周波数を変えることによって出力電圧が変化できることについて解説しました。

今回は、フィードバック制御を用いて、LLCコンバータを周波数変調で制御し、その安定性解析を行います。
それでは始めましょう。

周波数変調とは

周波数変調(Pulse Frequency Modulation, PFM)は、スイッチング周波数を変調することで、出力電圧や出力電流を制御する制御方法の一つです。
LLCコンバータでは、周波数と出力電圧の特性から分かる様に周波数を変更することで共振特性によって出力が変化します。
この特性を利用して出力を制御します。

つまり、出力電圧を上げたければ、共振周波数$f_r$よりも低い周波数で変調し、下げたければ$f_r$よりも高い周波数で変調することで、制御を行うことが可能です。

【図】 周波数-出力電圧特性

電圧フィードバック制御する

今回は出力電圧を制御することを目標に、制御系を作ってみましょう。
基本となる回路図は以下の通りです。

【図】回路図

共振周波数は、周波数-出力特性の通り、およそ100kHzにあります。
回路定数は、サンプル回路に含まれていますので、こちらを確認してください。

本記事で使用するサンプル回路を以下からダウンロード可能です。是非ご利用ください。
回路モデルは「LLC_PFM_Control_Sample.scicir」です。

シミュレーションモデルについて

本モデルは、パワエレ向け高速回路シミュレータ Scideamで動作可能です。
本記事のモデルは以下からダウンロードしてください。

さて、回路図の通り、コンバータの出力電圧をPID制御器にフィードバックし、PIDの出力をSFMというブロックに入力しています。
これは以下のような概要図で表されるフィードバックループを構築しています。

【図】フィードバックループ概要

SFMブロックは回路のメイン周波数を設定するブロックになっており、Scideam上ではメイン周波数=スイッチング周波数として動作させているため、周波数変調が可能です。

主回路の周波数特性解析

さて、フィードバック制御する前に、主回路の周波数特性を確認しましょう。
制御対象の特性が分かっていなければ、どのように制御すればよいか分かりません。

以下の回路のように構築し、Scideamを使用して微小信号重畳による周波数特性解析を行います。
主回路のSFM素子に、微小信号注入のためのVAS素子を以下のように接続します。

【図】主回路の特性を取る場合の接続

周波数特性解析を以下のように設定し、解析を行います。

【図】設定方法
項目設定
1SteadyOff
2FRA Start Time5m
3fromSFM
4toR

以下の結果を得ます。

【図】主回路周波数特性

以上により、LLCコンバータ主回路の周波数特性を取ることができました。

それでは、いよいよ制御を行っていきます。

回路サンプルの通り、PID制御が出力されているので、こちらを用いて制御をしてみます。
既に制御パラメータは設定されているので、サンプルモデルをご覧いただければよいですが、Transient解析を行うと以下のように出力電圧を制御することができます。

【図】時系列解析

おおよそ、0.6msecで定常状態に到達しており、出力電圧が目標電圧の通りになっていることが分かります。

さて、この周波数特性を取ってみましょう。
設定は以下の通りです。

項目設定
1SteadyOff
2FRA Start TimeSm
3fromVfb
4toR

これで、出力電圧から出力抵抗にかかる電圧までの一巡伝達関数の周波数特性を取ることが可能です。
ボード線図は以下となります。

【図】ボード線図

まとめ

投稿者:

中村 創一郎