
HERICインバータ
HERICインバータの概要とScideamシミュレーション
目次
はじめに
太陽光発電システムでは、高効率で信頼性が高く、さらに漏れ電流を抑制できるインバータ方式が求められています。その中でも HERIC(Highly Efficient and Reliable Inverter Concept)インバータは、近年多くのメーカーで採用が進む方式です。
本記事では、HERICインバータの回路構成と動作原理、そして一般的なフルブリッジ方式と比較した際のメリットを、図を交えながら分かりやすく解説します。
今回する使用モデルについて
本記事で使用するサンプル回路は、以下からダウンロードしてご利用いただけます。
なお、本サンプル回路はScideamで動作します。
Scideamをお持ちでない方は、以下よりダウンロードをしてご利用ください。
回路構成
HERICインバータの基本構成は、フルブリッジインバータに2つのバイパススイッチを追加した構成となります。

追加されたバイパススイッチ(QM5、QM6)は、ソース端子が向き合うように接続されており、これによりボディダイオードを利用した通電経路が確保されます。

動作モード
HERICインバータは、出力交流電圧の極性に応じて4つの動作モードを持ちます。

出力電圧が正となる区間
● モード1
- スイッチ:QM1・QM4 ON
- リファレンス交流電圧に基づくPWMを生成し、出力を行う
● モード2
- スイッチ:QM1・QM4 OFF
- バイパススイッチ(QM5)を通して電流を継続
- QM6をONすることで、ボディダイオードを回避した通電が可能
出力電圧が負となる区間
● モード3
- スイッチ:QM2・QM3 ON
- リファレンス交流電圧に基づくPWMを生成し、出力を行う
● モード4
- スイッチ:QM2・QM3 OFF
- バイパススイッチ(QM6)を通して電流を継続
- QM5をONすることで、ボディダイオードを回避した通電が可能
動作モードとスイッチ状態一覧
| スイッチ | モード1 | モード2 | モード3 | モード4 |
|---|---|---|---|---|
| QM1 | ON | OFF | OFF | OFF |
| QM2 | OFF | OFF | ON | OFF |
| QM3 | OFF | OFF | ON | OFF |
| QM4 | ON | OFF | OFF | OFF |
| QM5 | ON | ON | OFF | ON |
| QM6 | OFF | ON | ON | ON |
HERICインバータのメリット
① コモンモード電圧の変動が小さく、漏れ電流を低減できる
一般的なバイポーラインバータでは、フルブリッジのオン・オフによりコモンモード電圧が ±Vdc の範囲で大きく変動します。
一方、HERICインバータでは次のように動作します。
- モード2・4のオフ区間でバイパススイッチによりゼロ電圧区間が発生
- 正負の切り替え時に同じレグのスイッチのみが動作
そのためコモンモード電圧の変動はVdc ~ 0、0 ~ -Vdcとなり、一般的なフルブリッジインバータの半分に抑えることができます。

太陽光発電システムでは、パネルと地面の間に存在する寄生容量を通じて漏れ電流が発生します。
漏れ電流は感電等の原因となるため、小さく抑える必要があります。
漏れ電流は規制容量 $C \times \frac{dV}{dt}$で生じるため、電圧変動の小さいHERICインバータは漏れ電流を効果的に抑制できます。
② スイッチング損失が小さく、高効率
一般的なフルブリッジでは、スイッチオフ時にボディダイオードを経由して電流が流れるため、リカバリー損失が発生します。
HERICインバータでは、モード2・4においてバイパススイッチを制御することで、電流がボディダイオードを経由しない経路を確保できます。
これにより、リカバリー損失を大幅に低減できます。
まとめ
HERICインバータは、フルブリッジ回路にバイパススイッチを追加するというシンプルな構成でありながら、
- コモンモード電圧の変動を半減し、漏れ電流を大幅に低減できる
- ボディダイオードを回避した通電が可能で、スイッチング損失を抑えられる
- 結果として高効率を実現できる
といった大きなメリットを持つインバータ方式です。
太陽光発電システムでは、漏れ電流の規制や高効率化の要求が年々高まっており、HERICインバータはそのニーズに非常に適した構成といえます。 今後も住宅用・産業用問わず、幅広い用途で採用が進むことが期待されます。
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