
シミュレーション精度の基礎
精度とは何か?
目次
はじめに
回路シミュレーションは、いまや電子回路やパワーエレクトロニクスの設計に欠かせない基本ツールです。
スイッチング波形の確認、損失の計算、制御の動作検証など、実機を作る前に“できるだけ正確な結果”を得ることが求められます。
ところが、実際にシミュレーションを始めてみると、多くの初心者が同じ疑問につまずきます。
- 「シミュレーション結果が思い通りにならない…」
- 「実機の波形と微妙に合わない」
- 「タイムステップを細かくすると重くて回らない」
これらは決して珍しい悩みではありません。
むしろ、シミュレータを使う技術者が必ず一度は通る道です。
そして多くの場合、その原因は“精度とは何か”が曖昧なままシミュレーションしていることにあります。
このブログでは、入門者の方がつまずきやすい「精度とは何か?」という本質的な疑問を、できるだけわかりやすく分解して説明します。
- なぜシミュレーション結果がズレるのか
- どこを改善すると精度が上がるのか
- モデル・パラメータ・計算精度がどのように効くのか
- パワエレ系で特に注意すべきポイントはどこか
こうした疑問を整理しながら、回路シミュレータを“正しく使える技術者”になるための基礎を築くことがこのブログの目的です。
ご注意:このブログでは回路シミュレーションをはじめとする1Dシミュレーションを単にシミュレーションと呼び、シミュレーション精度は回路シミュレーションの精度を指します。
そもそもシミュレーションの精度とは何か
まず結論です。
シミュレーションの精度とは
“モデル精度 × パラメータ精度 × 計算精度” の掛け算で決まる総合力です。

どれか1つが欠けても、どれかが極端に低くても、 最終的なシミュレーション結果は必ずズレます。 逆に言うと、「精度を上げる」とは、この3つをそれぞれ適切なレベルに揃えることそのものです。
ここで、「適切なレベルに揃える」ということはモデリングを行う上で非常に重要ですが、今回のテーマと少し異なるので、シミュレーション粒度とシミュレーション速度を例に挙げたブログ記事で別途、紹介したいと思います。
まとめると、
シミュレーション精度 = モデル精度 × パラメータ精度 × 計算精度
であり、その評価は
目的に対して適切なレベルであるか ということになります。
モデル精度とは
モデルベース開発におけるモデルの定義はいろいろありますので、以下のブログを参考にしてください。
回路シミュレータにおけるモデルとは、
「素子や回路の物理特性を数式化したもの」を指します。
そして、モデル精度とは、
素子や回路の数学モデルが実際の物理現象をどの程度まで表現しているか であり、
それは適切なレベルで作られているかで評価します。
この内容はこれだけで大きなテーマなので、以下のブログで深堀します。
[リンク]
パラメータ精度とは
パラメータの精度とは、
モデルが持つ物理量(L、C、R、寄生、スイッチング特性など)を、実機の値にどれだけ近づけられているか。
ということです。
ここで強調したいのは、
パラメータはモデルに「意味」を与えるものであり、 モデルを現実のデバイスとして機能させるために必要なもの。
という点です。
例えば損失解析の場合、モデルが再現したいのは「スイッチング素子の各電圧電流波形」。
そのため必要なのは、
- Ciss、Crssの値
- Coss の電圧依存
- 逆回復特性
- スイッチング素子周辺の寄生インダクタンス
など、“損失に直結するパラメータ”の実機に近い精度です。
各寄生成分を細かくするという話ではなく、
損失の発生メカニズムを正しく成立させるための値
が必要であり、モデルとセットで考えていく必要があります。
計算精度とは
モデル精度とパラメータ精度は「実機に近づける」話でしたが、計算精度だけは性質がまったく異なります。
計算精度とは、
シミュレータが内部で“どうやって時間を刻んで回路を解いていくか”という純粋に数値計算の世界の話で、ユーザからは見えにくく、正解も分かりにくい領域です。
しかも、一般的なシミュレータではユーザ自身がこの計算精度を手動でチューニングする必要があるため、正しく使いこなすことが非常に難しくなっています。
計算精度が悪いと、モデル、パラメータについても狙った結果になっているか分からず、それぞれが適切かどうか判断がつかないでしょう。

まずは、一般的なシミュレータで解析を行う際の難しさについて計算精度を決める3要素である、
刻み時間、数値積分法、収束条件について大まかに説明します。
刻み時間(タイムステップ)
どれくらい細かい時間で計算するかという設定
- 細かくすると、過渡が正しく出るが計算が重い
- 粗くすると、波形が歪んだり、立ち上がりが消えたりする
どの程度が“ちょうどいい刻み”なのか、判断が難しい。
例えば、
MOSFET のスイッチングが 20ns 、寄生容量が1000pFならどれくらい刻むべきか?
答えはモデルとパラメータ、さらに周囲の回路によって違い、正解が分からない。
これがまず、入門者がつまずくポイントです。
数値積分法
“どういう計算方法で回路を解くか”という設定
シミュレータによってさまざまな解法を選択することができます。
例えば、LTSpiceであれば、
- Trapezoidal
- Modified trap
- Gear
の3種類を選択することができます。
どの解法が適切かは、回路の性質に依存するため、
ユーザが選ぶには専門知識が必要です。
収束条件(tolerance)
“どこまで誤差を許すか”という設定
- 厳しくしすぎると計算が止まる
- 緩くしすぎると波形が不自然になる
どこまで厳しくすべきかは、
モデルとパラメータごとに最適値が違うため、ユーザが判断できない。
まとめると、
刻み時間、積分法、収束条件をそれぞれ
モデルとパラメータに合わせて適切に設定する必要があります。
これは入門者だけではなく、中級者でもつまずく内容であり、ユーザーが設定するには非常に難しい内容です。
計算精度を自動最適化するシミュレータ
弊社の回路シミュレータScideamの最大の特徴は、
モデル精度 × パラメータ精度 × 計算精度
のうち、最も専門性が高く、最も調整が難しい“計算精度”を自動で最適化する仕組みを持っていることです。
ユーザが行うのは、
- モデルを作る
- モデルに実機に近いパラメータを入れる
これだけです。
計算精度に関しては、
Scideam が内部で解析し、回路の特性に合わせて最適な条件を自律的に設定します。

なぜ計算精度自動最適化が重要なのか
理由は単純で、
“計算精度”こそ、シミュレーションの安定性・信頼性・再現性を左右する最重要要素だから。
モデルが良くても、パラメータが正しくても、
計算精度が適切でなければ絶対に正しい結果は得られません。
しかし一般的なシミュレータでは、この計算精度が“ユーザ任せ”になっているのが現状です。
そこで Scideam は、モデルとパラメータを解析し、
「この回路を正しく解くための最適な計算条件」を自動的に設定するアルゴリズムを実装しています。
これにより、
- 計算が止まらない
- 波形が不自然にならない
- EMC・過渡・損失などの目的に応じた結果が自然に出る
- パラメータを変えただけで精度調整が勝手に追従する
という状態を実現しています。
考えるのは設計だけ、計算精度はScideamに任せればいい
他のシミュレータでは、設計のたびに「正しい設定を探す」ことに時間がかかり、
ときには“正しく動かない理由が分からない”状態にも陥ります。
しかし Scideam では、
ユーザはモデルとパラメータだけに集中し、 計算精度は全て Scideam に任せることができます。
その結果、
- 入門者でもすぐ使える
- 中級者でも設定に悩まない
- 上級者は“結果確認”に集中できる
- 試行錯誤の時間が削減される
- 毎回の計算結果が安定して再現性が高い
という圧倒的な利便性が生まれます。
Scideam は、モデルとパラメータ設定から、
最も難しい“計算精度の自動最適化”を実現することで、
技術者が目的の解析に集中できる高速回路シミュレータです。
まとめ
回路シミュレーションの精度は、
モデルの精度 × パラメータの精度 × 計算精度
という3つの要素の総合力で決まります。
モデル精度やパラメータ精度は、「実機に近づける」領域であり、技術者にとって直感的に理解しやすい部分です。
一方で、
計算精度だけはシミュレータ内部の数値計算の話であり、
また、モデルとパラメータの特性ごとに最適値が異なり、経験と専門知識がないと調整が非常に難しいだけでなく、
誤った設定でも“波形は出てしまう”ため、間違いに気づきにくいという構造的な問題があります。
こうした背景の中で、Scideam の大きな強みは、
この最も難しい「計算精度」を自動で解析し、最適な計算条件を内部で設定できることにあります。
ユーザは、
モデルとパラメータの実在性に集中すればよく、計算精度に関する調整や試行錯誤を意識する必要はありません。
回路シミュレーションは難しくありません。
難しかったのは“設定そのもの”であり、その部分を Scideam が肩代わりします。
モデルとパラメータの設定に専念することができるScideamの環境を、ぜひ一度お試しください。
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