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詳細IGBT素子のスイッチング特性

基本特性

IGBT素子には基本特性として次の4つの特性があります。

  • オン領域
  • オフ領域
  • アクティブ領域
  • テール領域

オン領域、オフ領域では、それぞれオン抵抗、オフ抵抗でモデル化されています。

アクティブ領域,テール領域はスイッチング損失を求めるのに最も重要な領域であり、 それぞれ特性式を用いて解析されます。
ターンオン特性、ターンオフ特性は、設定されている測定条件下においてコレクタ電流変化時間がターンオン時間(Rise Time)、ターンオフ時間(Fall Time)に近づくような特性となっています。
以下のスイッチング特性に関係するパラメータは適切に設定する必要があります。

  • Gate Resistance
  • Gate Resistance at ON state
  • Gate Resistance at OFF state
  • Input Capacitance(Cies)
  • Output Capacitance(Coes)
  • Rise Time
  • Fall Time
  • Collector Current at Rise/Fall Time
  • Collector-Emitter Voltage at Rise/Fall Time
  • Saturation Gate Voltage
  • Gate Voltage at ON State

パラメータの定義と設定について

スイッチング特性に関係するパラメータの定義や、パラメータ設定に実測値やデータシートを使用する場合の注意点について記載します。


Rise Time(Tr)の定義

ScideamにおけるRise Time(Tr)は、ターンオン時において正味のコレクタ電流が0からオン電流になるまでの時間と定義しています。
ここで、正味のコレクタ電流とは、出力容量Coesおよびボディダイオードの電流を含まないコレクタ電流を意味します。


Fall Time(Tf)の定義

Fall Time(Tf)はターンオフ時において正味のコレクタ電流がオン電流からオン電流の10%になるまでの時間と定義しています。 Fall Timeには,テール電流期間が含まれます。


Rise Time/Fall Timeの注意点

ScideamのRise Time(Tr)Fall Time(Tf)にデータシートや実測値を利用する場合、以下の点に注意が必要です。

  1. インダクタ負荷で定義されている
    ScideamのRise TimeFall Timeは、インダクタ負荷で定義されています。

  2. Rise Timeはコレクタ電流変化の0%~100%で定義されており,Fall Timeは10%~100%で定義されている。
    データシートでは、Rise Time, Fall Timeともにコレクタ電流変化の10%~90%で定義されています。

  3. Coesやボディダイオードの電流を除いた正味のコレクタ電流で定義されている
    実測値のコレクタ電流はCoesやボディダイオードの電流を含んでいます。
    一方、Scideamでは、Rise TimeFall Timeの定義にはCoesの電流を含まない正味のコレクタ電流が使用されています。


実測値を利用する場合

実測値を使用する場合はパラメータごとに下記の点をご確認ください。

Gate Resistance
Gate Resistance at ON state
Gate Resistance at OFF state

Gate Resistanceは、後述のInput Capacitance(Cies)とともにゲート電圧の時定数を決定し、結果としてコレクタ電流のスルーレートを決定する重要なパラメータです。

ゲート抵抗に関するパラメータはScideamv2.8でパラメータが追加され、設定内容が変更されているためご注意ください。

  • v2.8以降のバージョン
    Gate ResistanceIGBT素子内部の抵抗を設定します。 Gate Resistance at ON stateTr,Tf測定時のドライブ回路のゲート抵抗を設定する必要があります。
    Gate Resistance at OFF stateTr,Tf測定時のドライブ回路のゲート抵抗値がターンオン時とターンオフ時で異なる場合にターンオフ時のゲート抵抗値を設定します。
    ターンオンとターンオフで同じ回路の場合はGate Resistance at ON stateと同じ値を設定してください。

  • v2.7以前のバージョン Gate Resistance素子内部の抵抗だけでなく、ドライブ回路のゲート抵抗も含めて設定する必要があります。

Input Capacitance(Cies)

ゲート・エミッタ容量 + ゲート・コレクタ容量の和です。

Output Capacitance(Coes) at 20V

できるだけVce=20Vで測定してください。
スイッチング時にはVceが変化するとCoesも動的に変化します。

Reverse Transfer Capacitance(Cres) at 20V

ゲート・コレクタ容量です。
できるだけVce=20Vで測定してください。
スイッチング時にはVceが変化するとCresも動的に変化します。
ただし,Cresを有効にするにはSwitch Device SettingにおいてCresをチェックしてください。

Saturation Gate Voltage

オン領域になるときのゲート・エミッタ間電圧です。
通常は、ドライブ回路のパルス振幅(0Vからの値)を設定します。
この値が、パルス振幅より大きいとIGBT素子はオンしきれずスイッチング損失が大きくなります。

Rise Time
Fall Time

これらのパラメータに関しては上述の定義を参照してください。

Collector Current at Rise/Fall Time
Collector-Emitter Voltage at Rise/Fall Time

Collector Current at Rise/Fall Timeは、ターンオン直後のコレクタ定常電流を設定してください。
Collector-Emitter Voltage at Rise/Fall Timeはターンオフ直後のコレクタ・エミッタ定常電圧を設定してください。

Tail Current Factor
ターンオフ開始直前のコレクタ電流に対するテール開始電流の比率を設定します。
例えば,ターンオフ開始時のコレクタ電流が10Aで,テール電流が流れ始めたときのコレクタ電流が2Aであれば Tail Current Factorは2/10=0.2となります。0.1より大きい値を設定してください。


データシートを利用する場合

データシート値を利用してパラメータ設定する場合も、実測値を利用する場合と基本的には同じですが、以下の点にもご確認ください。

Output Capacitance(Coes) at 20V

コレクタ・エミッタ容量 + ゲート・コレクタ容量の和です。
IGBTでは,データシートにVce-Coes特性が記載されていますが,Vceの範囲が低電圧に偏っているものがあるため, Scideamでは,ほとんどのデータシートに記載されているVce=20VときのCoesのみを設定します。
スイッチング時にはVceが変化するとCoesも動的に変化します。

Reverse Transfer Capacitance(Cres) at 20V

ゲート・コレクタ容量です。 IGBTでは,データシートにVce-Cres特性が記載されていますが,Vceの範囲が低電圧に偏っているものがあるため, Scideamでは,ほとんどのデータシートに記載されているVce=20VときのCresのみを設定します。
スイッチング時にはVceが変化するとCresも動的に変化します。
ただし,Cresを有効にするにはSwitch Device SettingにおいてCresをチェックしてください。

Rise Time
Fall Time
Collector Current at Rise/Fall Time
Collector-Emitter Voltage at Rise/Fall Time
Gate Resistance
Gate Resistance at ON state
Gate Resistance at OFF state
Gate Voltage at ON State
Gate Voltage at OFF State

これらのパラメータは一般的に、Rise Time(Tr)Fall Time(Tf)の項目に条件値として記載されており、実機での測定値と異なるケースが多々あるため、データシートの値を使用する場合は一括して設定することが推奨されます。

以下のゲート駆動回路に関係するパラメータについてはScideamv2.8で変更及び追加されているため注意が必要です。

Gate Resistance
Gate Resistance at ON state
Gate Resistance at OFF state
Gate Voltage at ON State
Gate Voltage at OFF State

  • v2.8以降のバージョン
    Gate Resistanceはデータシートに記載されているFET素子内部のゲート抵抗を設定します。
    Gate Resistance at ON stateGate Resistance at OFF stateについてはデータシートのTr,Tf測定時の条件値に記載されたゲート抵抗値を設定します。
    ゲート駆動回路がターンオンとターンオフで分かれている場合はGate Resistance at ON stateにターンオン時のゲート抵抗値を設定し、Gate Resistance at OFF stateにターンオフ時のゲート抵抗値を設定します。
    ゲート駆動回路が分岐していない場合や特に記載がない場合は双方に同じ値を設定してください。
    Gate Voltage at ON StateGate Voltage at OFF StateについてはTr,Tf測定時の条件値に記載されているゲート飽和電圧と、実際のゲート飽和電圧に乖離がある場合に、Tr,Tf測定時の条件値の値を設定します。

  • v2.7以前のバージョン
    Gate ResistanceについてはFET内部のゲート抵抗と、Tr,Tf測定時の条件値に記載された外部ゲート抵抗値を足し合わせたものを設定します。
    データシート値を設定し、実機との差分抵抗をドライブ回路に外付け抵抗として付加します。
    なお、Scideamでは、正負の抵抗値が設定できます(0には設定できない)。